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弾幕と認知神経科学

 で、東方はカラフルな弾幕を使う輩が多い訳ですが、それは実用的ではない色などに拘る事で心に余裕を持たせているからです。色が変わったところで攻撃力には影響しないのですが、そこがミソって事ですね。
博麗幻想書譜 2007-09-18

ちょっとした実験です。以下のサイトにアクセスしてください。

Flash-Lag Effect From Michael’s “Optical Illusions & Visual Phenomena”

右上の[Start]ボタンを押すと、中央の×を中心に、黒く縁取られた青い丸が回転します。そして、青い丸はランダムな間隔で黄色に一瞬変化します。
では、中央の×に視点を合わせて、周辺視野だけで回転している丸を見てください。黄色に変化した瞬間、その黄色はどのように見えているでしょうか。円ではなく、三日月のような形で見えていませんか?
[Slow]ボタンを押すと回転がゆっくりになります。青い丸に視点を合わせて見ると、黄色になった瞬間も三日月型ではなく、ちゃんと円型を保っていることが確認できます。

これは認知神経科学で“Flash-Lag Effect”と呼ばれる現象の実験で、下の方のCommentというところに説明が書かれています。補足しつつ簡単に要約すると、

・視覚のメカニズムでは、入ってきた情報が脳に伝わって“perceived”(知覚された状態)になるまでに、(神経の伝達速度とか、網膜から入ってきた光を電気信号に変換するコストとか、その他諸々の理由により)少しタイムラグがある。
・だから、移動している物体は、知覚された時点で既に、入ってきた情報とは別の場所に移動してしまっている。
・脳はこの誤差を埋め合わせるために、「移動している物体(上のテストでは青い円と黒い縁)」に関しては、「現時点で存在するであろう場所」に位置情報を補正してから、意識に投影する。
・ところが、「突然現れた物体(上のテストでは黄色い円)」は移動しているものとして認識されないため、入ってきた情報がそのまま(補正無しで)意識に登ってくる。
・結果として、移動している黒い縁は補正された位置、突然現れた黄色い円は視覚情報そのままの位置に投影されて、黄色い円が実際よりも遅れた位置に見える。

といった感じ。ちなみにこの現象、サッカーのオフサイド判定で発生する誤審の原因の一つとも考えられているらしいです。面白いですよね。

で、それはそれとして本題。東方をある程度やり込んだ人間は皆感じていることだとは思いますが、数ある弾の種類の中で特に弾自体にエフェクトが付いているもの(魔理沙の小星弾、流刑人形のウィルス弾、大鐘婆の火炎弾等)が異様なまでに避けにくいのは、大本を辿るとこの現象が原因となっているのだと思います。

単体で動いている状況で見ても自覚は出来ませんが、実際のゲーム中で、特に周辺視野だけで処理するような状況の場合、恐らくこの種の敵弾は実際の位置よりも少し遅れた位置に見えているんでしょうね。四方全てに気を配り続ける必要のある4Bボス魔理沙通常1などは、この現象による高難易度化が特に顕著なのではないでしょうか。

これを踏まえて、最初の話に戻ると、
> 色が変わったところで攻撃力には影響しないのですが

場合によっては(主にプレイヤーに対する)攻撃力に影響してますよ、というお話でした。

プレイアビリティを考えると、単純な色以外のエフェクトを弾幕シューティングの弾に付与するのは、リスクの高い選択だと思います。勿論これは遊ぶ側からだけの視点であって、作る側からすればそれよりも見た目を重視したり、逆にこれを使って「もどかしさ」みたいな効果を狙うといのも、勿論ありだと思いますが。このあたりは釈迦に説法ですね。

ちなみに、背景色とのコントラストだけでもこんな現象が発生したります。+に視点を合わせながら、[Background]ボタンをスイッチすると…
(コントラストが見た目の速度に影響する、という実験)
by mostlyharmless | 2007-09-24 01:26 | 徒然